怒りの相談室
当院がわざと痛くなるように処置をすることはないので、この場を借りてきちんと説明しておきたいと思います。
当院では、患者様の歯1本1本を大切にしたいと思っております。大切にしたいというのは、10年後を見据えてよい状態を保ってほしいということです。
単に、抜きたくない、削りたくないでは科学的ではありません。科学的というからには皆様に歯の基本的な知識を知って頂かなくてはなりません。
下図のように、最も硬いエナメル質(歯のよろいで感覚はない)の中に象牙質(感覚あり、歯髄と歯の表面を象牙細管にて結ぶことにより、外の刺激を歯髄に伝えます。歯の中で最も多い部分)があります。
一番中央には、歯髄、一般的に歯の神経があります。虫歯が歯髄まで到達したり、歯が割れたり、歯の形を整えるため歯を削ることにより、歯髄が露出すると取り除かないとだめになります。
歯髄を取ると歯は枯れた状態となり、10年以上経つと噛む力により割れたりすることがあるので、なるべく取らないようにしています。つまり、一部のエナメル質を無理に残して割れて歯髄を取るようになるよりも削ってかぶせる方がいいことも多いのです。
こうして説明を聞くと歯にとって最も大事なのは歯髄のように思われると思いますが、もっと大事なものがあります。
それは、歯の根を支える骨なのです。これを歯槽骨と呼びます。
歯槽骨は歯周病等で溶けてしまうことがあります。歯周病で5㎜以上骨が溶けてしまった場合は急激に進行することもあります。
その歯を残しておくことにより隣の健康な歯の骨まで溶かしてしまい10年後に良い状態を保てません。そのために悪い状態の歯を手術したり抜いたりすることにより骨を多く残すようにしたほうが良いのです。それにより入れ歯を支えたり、インプラントの土台にすることができます。
では、治療して痛みが出る原因を順に説明します。

エナメル質
歯冠部の表面の最も硬い部分です。
象牙質
歯の形をつくっており、歯冠部から歯根部まで歯の中心をなします。
セメント質
歯根部の象牙質をおおって、顎の骨とくっつく役目をします。
歯髄
歯の中(中心部)には一般に神経といわれている歯髄があります。この中には、血管、リンパ管、神経繊維などがあって、歯に栄養を与える大切な役目をしています。
歯肉(歯ぐき)
歯冠の下のピンク色をした粘膜を歯肉といい、歯を支えている骨(歯槽骨)を被って保護する役目をしています。歯肉は歯を守る役目も担います。
歯根膜
歯根と歯槽骨(歯を支える骨)の間にある薄い膜のことで歯根と骨をつなぐ役目をしています。一般に歯が浮く、噛んで痛いという症状にこの歯根膜が炎症を起こしている場合が多いのです。
歯槽骨
歯を支える顎の骨のことを言います。歯肉が炎症を起こして化膿してくるとこの歯槽骨が溶けてきます。それがいわゆる歯槽膿漏です。
A.神経を切断したことによる傷の疼き。
B.根の先の方を触るので、その刺激により歯根膜が炎症を起こしている。(歯根膜の神経は健在です。)
C.まれに神経の構造が複雑な場合。神経が取りきれずに残っていてそれが痛む。
D.根に樹脂を詰めた後に痛む。
通常の治療の場合、AとBは常に起こりうる可能性があることをご了承下さい。
Aは2~3日で回復します。BとDは噛んだ時の痛みとしての症状としても出てきます。症状の強い場合は、投薬や噛み合わせの調整で様子をみます。Cは再度麻酔をおかけして全ての神経を取るということになります。
抜歯後にできた穴は通常、血の蓋で塞がれますが、うがいをしたり、何かに触れたりしてそれが取れてしまった時に骨が露出し、そこに口の中の細菌が感染し て骨の炎症が発生することがあります。この場合は強い痛みが出てきます。放置していても治りが悪いので、このような炎症を起こした場合にはもう一度麻酔し て感染した骨の面を掃除してもう一度血の蓋を付けてやらねばなりませんので、あまりにも強い痛みが持続する場合には来院してください。